【2026年版】社員から介護相談があったときの社内対応フロー7ステップ ~「誰に相談すればいい?」をなくし、介護離職を防ぐ仕組みづくり~
社員から突然「親の介護について相談したい」と言われたら、会社はどう対応すればよいのでしょうか。本記事では、管理職・人事・総務が行うべき対応を7ステップで解説。介護離職を防ぐための相談体制づくりや仕事と介護の両立支援のポイントを、中小企業向けにわかりやすく紹介します。
「実は、親の介護が必要になりまして……」
ある日突然、部下からこのような相談を受けたら、あなたはどう対応するでしょうか。
「介護休業を取りますか?」
「家族で何とかできませんか?」
「詳しいことは人事に聞いてください」
悪気はなくても、このような対応だけで終わってしまうと、社員は「会社には相談できない」と感じ、一人で仕事と介護の問題を抱え込んでしまうかもしれません。
介護は、育児のように始まる時期や期間を予測しやすいものではありません。親の転倒や入院、認知症の進行などをきっかけに、突然始まることもあります。
だからこそ企業に求められるのは、制度を用意することだけではありません。
「相談を受ける → 状況を整理する → 社内で連携する → 制度を確認する → 専門家につなぐ → 働き方を調整する → 継続してフォローする」
という流れを、あらかじめ仕組みにしておくことが重要です。
2025年4月からは改正育児・介護休業法により、介護離職防止のための雇用環境整備、介護に直面した労働者への個別の制度周知・意向確認、40歳前後での情報提供などが事業主に義務付けられました。2026年現在、仕事と介護の両立支援は、企業がより具体的に取り組むべきテーマになっています。厚生労働省
今回は、中小企業が社員から介護相談を受けたときの対応を、実務に使いやすい「7ステップ」に整理して解説します。
1.なぜ「介護相談の社内対応フロー」が必要なのか
社員から介護の相談があったとき、最も避けたいのが「相談を受けた人によって対応が違う」という状態です。
A課長は「人事に相談してください」と伝える。
B課長は「介護休業を取ったら?」と答える。
C課長は親身になって話を聞くものの、制度や介護サービスについて分からず、一人で抱え込んでしまう。
これでは、会社に制度があっても十分に機能しません。
2025年4月以降、企業には介護休業・介護両立支援制度等を利用しやすくするため、研修の実施、相談体制の整備、自社事例の収集・提供、利用促進方針の周知のいずれかの措置を講じることが義務付けられています。さらに、社員から介護に直面した旨の申出があった場合、制度の内容や申出先、介護休業給付金について個別に周知し、制度利用の意向を確認する必要があります。都道府県労働局所在地一覧
つまり「制度は就業規則に書いてあります」だけでは十分ではありません。
一方で、会社が社員の親の介護そのものを解決する必要もありません。
会社の役割は「介護をすること」ではなく、社員が必要な支援につながり、仕事を続けられる環境をつくることです。
そのために、誰が相談を受け、誰につなぎ、どの段階で専門職に相談するのかを決めておくことが重要なのです。
2.STEP1 まず社員の相談を受け止める
社員から介護について相談されたとき、管理職が最初に行うべきことは、すぐに解決策を提示することではありません。
まず本人の話を聞きましょう。
「会社としてできることを一緒に考えましょう」
という姿勢を示すだけでも、社員の安心感は変わります。
この段階では、
- 何に困っているのか
- 仕事を続けたいと考えているのか
- 勤務上どのような支障が出ているのか
- 何を会社に相談したいのか
を確認します。
同時に、本人の同意なく介護の事情を職場全体に伝えないなど、プライバシーへの配慮も欠かせません。
避けたい対応
「仕事を続けるのは難しいのでは?」
「家族で何とかできないの?」
「介護休業を取ればいいのでは?」
「今の仕事を続けるのは無理でしょう」
こうした言葉は、本人の希望や状況を確認する前に選択肢を狭めてしまう可能性があります。
最初に必要なのは「答えを出すこと」ではなく「本人の話を聞くこと」です。
3.STEP2 介護状況と本人の希望を整理する
次に、仕事と介護の両立に必要な情報を整理します。
例えば、
- 誰の介護が必要なのか
- 現在どのような状況なのか
- 同居か別居か
- 他に支援できる家族がいるか
- 介護保険サービスを利用しているか
- ケアマネジャーがいるか
- 通院や各種手続きへの対応が必要か
- 仕事に影響が出る時間帯はいつか
- 本人は今後どのように働きたいか
などです。
ただし、会社が家庭内の事情をすべて把握する必要はありません。
大切なのは、「仕事と介護の両立に必要な範囲」で確認することです。
「誰が介護をするべきなのか」を会社が決めるのではなく、「本人が働き続けるために何が必要なのか」という視点で整理しましょう。
4.STEP3 人事・総務など社内担当者につなぐ
管理職が介護相談を一人で抱え込まない仕組みも必要です。
基本的な流れとして、
社員 → 上司 → 人事・総務・相談担当者
という社内ルートを決めておくとよいでしょう。
例えば、
「最初の相談は直属上司」
「制度説明は総務担当者」
「勤務変更は所属長と経営者」
というように役割を明確にします。
さらに重要なのが、誰に、どこまで情報共有するかです。
介護に関する情報は非常に個人的な内容を含みます。本人の意向を確認し、業務調整などに必要な範囲に限定して共有することが基本です。
管理職に介護制度の専門家になってもらう必要はありません。
「自分だけで解決しなくてよい」「次に誰につなげればよいか分かる」という状態をつくることが、管理職研修の重要な目的でもあります。
5.STEP4 利用できる制度を確認する
社員から介護に直面した旨の申出があった場合、2025年4月以降、事業主には介護休業制度等について個別に周知し、利用意向を確認することが義務付けられています。厚生労働省
2026年時点では、主に次の制度があります。
介護休業は、対象家族1人につき通算93日まで、3回に分けて取得できます。厚生労働省
ここで重要なのは、介護休業を単に「社員自身が長期間介護するための休み」と考えないことです。
厚生労働省も、介護休業を、介護サービスの手続きなどを含め、働きながら介護に対応できる体制を構築するための期間として位置付けています。厚生労働省
例えば、
「地域包括支援センターへ相談する」
「要介護認定の申請を進める」
「ケアマネジャーとサービスについて相談する」
「家族の役割分担を決める」
といった、今後の介護体制を整えるために活用する視点が大切です。
また、介護休暇は対象家族が1人の場合は年5日、2人以上の場合は年10日まで、1日または時間単位で取得できます。厚生労働省
そのほかにも、所定外労働の制限(残業免除)、時間外労働の制限、深夜業の制限、短時間勤務等の措置があります。時間外労働については、本人から請求があった場合、原則として月24時間・年150時間を超える時間外労働が制限されます。短時間勤務等についても、事業主には一定の措置が求められています。厚生労働省
さらに2025年4月からは、要介護状態の対象家族を介護する労働者がテレワーク等を選択できるよう措置を講じることが、事業主の努力義務となっています。厚生労働省
会社独自の休暇や柔軟な勤務制度がある場合は、それも含めて本人と選択肢を検討しましょう。
6.STEP5 外部の介護専門職・相談機関につなぐ
ここが非常に重要です。
企業の管理職や人事担当者が、介護保険制度や介護サービスについてすべて理解し、介護問題を解決する必要はありません。
むしろ重要なのは、「会社で対応すること」と「介護の専門家に任せること」を分けることです。
例えば、まだ介護サービスを利用していない場合には、本人や家族が住む地域の地域包括支援センターや市区町村の介護保険担当窓口が相談先になります。
すでに要介護認定を受け、担当のケアマネジャーがいる場合には、
「仕事を続けるために、平日の日中の介護負担を減らしたい」
「通院の付き添いと勤務をどう両立すればよいか」
など、仕事との両立状況も含めてケアマネジャーに相談することが考えられます。
入院中であれば、医療機関の相談窓口などにつなぐ方法もあります。
企業側が介護サービスの種類やケアプランを判断するのではありません。
会社は働き方を支援し、介護については介護の専門家につなぐ。
この役割分担ができると、管理職の負担も軽くなり、社員も適切な支援につながりやすくなります。
7.STEP6 働き方・業務分担を調整する
次に、社員本人の希望を確認しながら、働き方を検討します。
例えば、
- 勤務時間
- 休暇の取得
- 残業
- 出張
- 業務分担
- テレワーク
- 一時的な勤務調整
などです。
注意したいのは、
「介護をしている社員=これまでと同じ仕事はできない」
と会社側が決めつけないことです。
「介護があるから重要な仕事から外そう」
「昇進は難しいだろう」
と本人の意向を確認せず判断するのではなく、何が難しく、何なら継続できるのかを一緒に考えることが重要です。
育児・介護休業法では、介護休業等の取得などを理由とする解雇その他の不利益な取扱いは禁止されています。厚生労働省
社員のキャリアを止めるのではなく、働き続ける方法を探すという視点を持ちましょう。
8.STEP7 定期的にフォローする
介護は一度状況を確認すれば終わりではありません。
親の身体状況が変化したり、認知症が進行したり、利用する介護サービスが変更になったりすることがあります。
そのため、
「1か月後にもう一度話しましょう」
「状況が変わったらいつでも相談してください」
など、継続して相談できる環境をつくります。
フォロー時には、
- 現在の介護状況
- 介護サービスの利用状況
- 勤務上の困りごと
- 社内制度の利用状況
- 今後必要になりそうな支援
などを本人と確認します。
ただし、「必ず1か月ごと」と一律に決める必要はありません。本人と相談しながら、状況に応じたフォローを行うことが大切です。
9.一目で分かる「介護相談の社内対応フロー」
社員から介護相談
↓
① 相談を受け止める
↓
② 状況・本人の希望を確認
↓
③ 人事・総務へ連携
↓
④ 利用できる制度を確認
↓
⑤ 介護の専門機関へつなぐ
↓
⑥ 働き方を調整
↓
⑦ 継続フォロー
ポイントは、社員にも管理職にも、
「次に誰へ相談すればよいのか」
が見えることです。
厚生労働省も、企業向けに仕事と介護の両立支援の面談シートや個別周知・意向確認書など、実務で使える支援ツールを公開しています。厚生労働省
10.中小企業だからこそ「相談ルート」を決めておく
「うちは人事部も専門部署もないから難しい」
そう考える中小企業もあるでしょう。
しかし、大掛かりな仕組みから始める必要はありません。
まず、
- 最初に誰が相談を受けるか
- 誰に情報共有するか
- 誰が制度を説明するか
- 誰が勤務調整を判断するか
- 介護についてどこへつなぐか
- 誰がその後をフォローするか
を決めておくだけでも大きな一歩です。
例えば10人、20人規模の企業であれば、
直属上司 → 総務担当者 → 経営者
というシンプルなルートでも構いません。
重要なのは、立派な制度や専門部署を作ることではなく、「誰が・いつ・何をするのか」を決めておくことです。
2025年4月から義務化された介護離職防止の雇用環境整備についても、研修や相談体制の整備など複数の選択肢が示されています。会社の規模に合わせて取り組むことができます。都道府県労働局所在地一覧
11.介護相談対応で企業が避けたい5つのこと
①退職を前提に話をする
本人が「働き続けたい」と考えている可能性があります。まず両立できる方法を検討します。
②管理職一人で抱え込む
管理職が介護制度や介護保険制度をすべて理解する必要はありません。人事・総務や外部専門職につなぎましょう。
③家庭事情を必要以上に聞く
確認するのは、基本的に仕事と介護の両立に必要な範囲です。
④制度だけ説明して終わる
「介護休業があります」と伝えるだけでは、実際の介護体制は整いません。制度と介護サービスの双方を活用できるよう、適切な相談先につなぐことが重要です。
⑤一度対応した後にフォローしない
介護状況は変化します。相談し直せる環境をつくっておきましょう。
12.まとめ|制度だけではなく「つながる仕組み」をつくる
社員から介護相談があったとき、企業が介護問題そのものを解決する必要はありません。
企業が準備すべきなのは、
相談 → 状況確認 → 社内連携 → 制度確認 → 専門家につなぐ → 働き方調整 → 継続フォロー
という仕組みです。
制度があっても、社員が相談できなければ利用につながりません。
相談できても、管理職が一人で抱え込んでしまえば、適切な支援につながらない可能性があります。
そして、会社の中だけで解決しようとする必要もありません。
介護は地域包括支援センターやケアマネジャーなどの専門職につなぎ、会社は社員が働き続けられる環境づくりを支援する。
この役割分担が重要です。
社員が介護を一人で抱え込まない。管理職も一人で抱え込まない。その仕組みを企業として準備しておくことが、介護離職防止と人材定着につながります。
このようなお悩みはありませんか?
- 社員から介護相談を受けたときの対応方法が決まっていない
- 管理職によって対応がバラバラになっている
- 介護休業制度はあるが社員に浸透していない
- 社内の介護相談窓口を整備したい
- 管理職に介護の基礎知識を学んでもらいたい
- 介護離職を防ぎたい
- ビジネスケアラー対策を何から始めればよいか分からない
こうした課題は、制度を一度に増やすのではなく、自社の現状を確認し、必要な仕組みから整備していくことが大切です。
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